第34回 日本二分脊椎研究会

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脳神経外科(再繋留・成人例・地域連携)
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終糸脂肪腫により発症した成人脊髄係留症候群の3例
北海道脳神経外科記念病院 脳神経外科
千葉泰弘、小柳 泉、上森元気、佐々木貴啓、今村博幸、遠藤将吾、吉野雅美、青樹 毅、会田敏光

【はじめに】脊髄係留症候群は幼少期に発見されることが多いが、比較的稀に成人発症してくる症例も散見される。また、はっきりした原因がわからない腰下肢痛症例の中に、終糸脂肪腫による脊髄係留症候群が含まれることもある。今回我々は、終糸脂肪腫によって発症してきた成人脊髄係留症候群の3例を経験したため報告する。
【症例1】24歳男性。5年前からの腰痛あり。4ヶ月前から腰痛が持続し残尿感や便秘傾向もみられた。2ヶ月前に突然の強い腰痛と左下肢のしびれ・痛み・つっぱり感が出現、5–10分の間欠跛行もみられてきた。腰痛は前かがみで悪化し、腰部伸展で軽快した。
【症例2】62歳女性。1年半前から右下肢痛が徐々に悪化。排尿排便障害もあり。1年前から当院で終糸脂肪腫と脊髄係留症候群の診断。投薬治療を行うも症状は進行した。
【症例3】30歳男性。4ヶ月前に転倒により腰部打撲し右下肢痛が出現した。3ヶ月前に荷物を運ぶ作業で症状が悪化した。腰痛は前かがみで悪化し、腰部伸展で軽快した。
【経過】3症例とも脂肪腫化した終糸所見を認めた。低位脊髄や明らかな二分脊椎、仙骨部周囲のdimpleなどの所見は認めなかった。全例で1レベルの部分椎弓切除でアプローチし、脂肪腫化した終糸を切断、係留解除によって症状改善を得た。
【結語】原因不明の腰下肢痛や排尿排便障害をきたす症例の中に終糸脂肪腫による脊髄係留の病態が含まれることもあり、鑑別を要すると思われた。