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成人期発症の脊髄係留症候群に対する手術治療
市立奈良病院 脳神経外科1)、奈良県立医科大学 脳神経外科2)
【諸言】成人期発症の脊髄係留症候群に対して手術を行った3症例について検討を行う。
【症例1】29歳女性、出生後より潜在性二分脊椎を指摘。20歳時より排尿障害が進行、CICが導入された。29歳時、左足痺れを自覚し、手術治療を希望。X 線で著明な側弯、MRIでは巨大な脂肪腫を伴う二分脊椎で、L5レベルの低位円錐を認めた。下肢MEP/SEP/持続筋電図、BCRモニタリング、神経刺激マッピング支援下に脂肪腫摘出及び係留解除術施行。
【症例2】30歳男性、介護職。3ヶ月前からの腰痛、右足痺れを主訴に受診。 MRIで先天性皮膚洞と硬膜内腫瘤を認め、L3/L4レベルの低位円錐であった。数年前から尿失禁があり、臀部には多毛を認めた。係留解除術が行われ、尿失禁は消失した。腫瘤は類皮嚢胞であった。
【症例3】33歳女性、流産後の腹部エコーにて異常を指摘。MRIにて仙骨前腫瘤が直腸及び子宮を圧迫し、L3レベルの低位円錐を認めた。CTにて仙骨部分欠損も認め、Currarino症候群と考えられた。腫瘤摘出及び係留解除術施行。腫瘤は類表皮嚢胞であった。
【結語】潜在性二分脊椎等による脊髄係留症候群は、成長期に呈することが一般的である。しかし稀ながら、妊娠や就労に伴う労作により、成人期になってから症状を呈することがある。疾患概念の啓蒙とともに、画像検査や泌尿器科検査等の診療体制を構築することが重要である。