第34回 日本二分脊椎研究会

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下肢装具の工夫
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下肢屈曲拘縮に対して入院介達牽引を行った胸髄髄膜瘤の1例
宮城県立こども病院 整形外科
小松繁允、落合達宏、高橋祐子、水野稚香

【はじめに】脊髄髄膜瘤による下肢屈曲拘縮は、装具使用が困難となり、移動機能やリハビリテーションに支障をきたす。今回、股関節・膝関節の著しい屈曲拘縮を伴う胸髄髄膜瘤の男児に対して、入院介達牽引を行い屈曲拘縮の改善を得た1例を報告する。
【症例】胸髄髄膜瘤・Sharrard 2群15歳男児。両下肢麻痺に対して幼少時よりパラポジウムでの立位訓練を行った。就学後は骨盤帯付き長下肢装具での立位訓練と、PCW歩行訓練を行ってきた。しかし、成長に伴い下肢屈曲拘縮が進行し、装具使用が困難となった。入院での介達牽引療法を行った。
入院前の関節可動域(右/左)は股関節伸展-50/-50、膝関節伸展-15/-15であった。重錘1.5㎏でのスピードトラック牽引を左右交互に行った。トイレ・食事・理学療法時以外はベッド上で下肢牽引とし、病院併設の支援学校での授業も下肢牽引のまま行った。週末は外泊したため牽引は休止した。7週間の入院の結果、関節可動域は股関節伸展-25/-20、膝関節伸展-5/-5に改善した。骨盤帯付き長下肢装具の装着が容易となった。
【結論】下肢屈曲拘縮に対する治療では、大腿骨の伸展骨切りや軟部組織の解離術が多く行われている。しかし本例での屈曲拘縮は介達牽引にて改善した。したがって弛緩性麻痺の下肢筋群は、伸長ストレッチに反応しうる予備力があることが推測され、入院期間が確保できるなら、介達牽引はまず試みてよい選択肢といえる。