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二分脊椎児の知的特徴
東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科1)、東京大学医学系研究科 リハビリテーション分野2)、静岡県立こども病院 整形外科3)
【はじめに】二分脊椎児では、水頭症による非言語性学習障害が知られており、視覚的な判断や構成、抽象的・概念的・統合的な思考が苦手とされる。知的発達の遅れがみられる児は知能検査を受ける機会があり、個人のプロフィールが明らかになり必要に応じて学校教育で支援を受けることが可能であるが、そうでない児の知的能力は明らかでない。本研究の目的は、知的発達の遅れがない二分脊椎児の知的特徴を明らかにすることである。
【対象】知的発達の遅れがない、6–15歳の二分脊椎児6名(9.8±3.8歳)。水頭症を合併する児は4名でいずれもシャント術後。明らかな上肢障害のある児はいなかった。
【方法】WISC–IVを実施した。全検査IQ(FSIQ)、一般知的能力指標(GAI)、認知熟達度指標(CPI)、言語理解指標(VCI)、知覚推理指標(PRI)、ワーキングメモリー指標(WMI)、処理速度指標(PSI)についてWilcoxon符号付順位検定を用いて評価を行った。
【結果】各平均はFSIQ 91.0、GAI 99.7、CPI 81.8、VCI 98.5、PRI 100.2、WMI 89.5、PSI 79.3。CPIとPSIは一般集団の平均である100より有意に低かった (ともにp = 0.03)。CPIはGAIと比較して、PSIはVCI、PRI、WMIと比較して有意に低かった (いずれもp = 0.03)。
【考察】二分脊椎児では処理速度が低下している。原因として水頭症・脊髄空洞症などの中枢神経合併症の影響が考え得る。FSIQよりはGAIが二分脊椎児の知能の指標となると考える。