第34回 日本二分脊椎研究会

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新生児期・葉酸
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神経管閉鎖障害: 発生率の推移と予防対策
熱田リハビリテーション病院1)、グローバルアリーナ2)
近藤厚生1)、岡井いくよ2)

 国際的には神経管閉鎖障害(顕在性二分脊椎と無脳症)の発生率は、過去30年間に大きく低下した。この変化は1980–90年代に広く普及した超音波検査法と、1998年以降に多くの国々で実施されている葉酸添加政策による結果である。
 本邦では無脳症胎児の大多数は妊娠中絶されるため、その発生率は顕著に低下した。しかし二分脊椎の胎児では、中絶される症例は多くない。過去22年間の神経管閉鎖障害発生率は、1990年が13.9/10,000分娩、2000年が9.4/10,000分娩、2012年が5.55/10,000分娩(無脳症:0.37、二分脊椎5.18)である。この数字は生産(Live Births)と死産(Stillbirths)を含むが、妊娠中絶数(ToP: Termination of Pregnancy)は含まれない。ICBDSR日本支部はToPについて報告していないが、同僚の産婦人科医の推測によれば、無脳症の95%、二分脊椎の40%は中絶されていると言う。この仮説に従えば、無脳症は7.4(0.37/0.05)、二分脊椎は8.63(5.18/0.6)となり、神経管閉鎖障害の総数は16.3/10,000分娩となる。このデータは公式データ(5.55)のほぼ3倍となる。
 神経管閉鎖障害を予防するためには、次の4つの対策が重要有効である: 1)葉酸情報を国民へ繰り返し提供すること。2)栄養バランスに留意した食事を摂ること。3)葉酸サプリメントを内服すること。4)究極的には穀類への葉酸添加政策が必要である。2016年現在、全世界の80か国では小麦粉へ、6か国ではコメに葉酸添加政策が実施されている(Food Fortification Initiative)。その結果これら諸国では、神経管閉鎖障害の発生率が30–50%低下したと報告されている。