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S状結腸利用膀胱拡大術後20年以上経過した症例の検討
東京医科大学 消化器•小児外科学分野1)、順天堂大学 小児外科•小児泌尿生殖器外科2)
緒言)膀胱拡大術後20年以上経過した症例のみ纏めた報告は少ない。今回我々はS状結腸利用膀胱拡大術後20年以上経過した症例の検討を行ったので報告する。
対象・方法)S状結腸利用膀胱拡大術後20年以上経過観察が可能であった症例。尿路感染症の有無、膀胱結石の有無、膀胱尿管逆流(VUR)の有無、悪性腫瘍発生の有無、腫瘍マーカー(CEA)の上昇の有無、腎機能障害の有無、環境因子(雇用形態・結婚・出産・精神状態)について検討した。
結果)対象症例は40例であった。現在の平均年齢は34.4歳、平均経過観察期間は24.3年、平均手術時年齢は11歳であった。性差は男性25例、女性19例であった。原疾患は脊髄髄膜瘤35例、脊髄脂肪腫5例であった。死亡症例を2名(重症痙攣と原因不明)認めた膀胱結石を経験したのは12例(30%)であり、全例経尿道的に除去されていた。悪性腫瘍の発生はなく、腫瘍マーカー(CEA)の上昇も認めなかった。術前VURに対して膀胱拡大術と同時に逆流防止術を施行した症例は15例であり、そのうち14例(93%)は逆流が消失し、1例(7%)に残存を認めた。1例(2.5%)に術後有熱性尿路感染症の反復を認め、術後18年目に腎摘出を行なっている。34例(85%)は何らかの職業についており、4例(10%)は結婚していた。女性症例のうち2例(11%)が出産を経験していた。5例は精神疾患を患っていた。
結語)S状結腸利用膀胱拡大術は安全であるが、精神状態を含めた環境因子について今後も注視していく必要があると考える。